seminar 電子版プレミアムセミナー

石井てる美氏
「納得するキャリアの選び方」

 8月2日、東京・大手町のSPACE NIOで「日経電子版ビジネスセミナー」として、元マッキンゼー・アンド・カンパニー社員でお笑い芸人の石井てる美さんを招いて「納得できるキャリアの選び方」について話していただきました。東大院修了、大手コンサル入社という華麗なキャリアと、観客を目の前に日々笑いを獲る芸人の経験の意外な共通点などについて、自身のネタを交えながら熱く語ってくれました。以下はセミナーの要約です。

マッキンゼー辞め8年 ようやく楽しくなってきたのは昨年

石井てる美氏

マッキンゼーを辞めて8年が経ちました。最近、お医者さんに「十二指腸潰瘍の後が2カ所あります」っていわれたんですよ。勝手に治ったらしいですけど、心だけでなく体も悲鳴を上げてたんですね。当時は家族からも親戚からも期待されている、優秀でまだまだ気張っている20代ですからここで辞めるのは恥ずかしいし、何よりそれまで頑張ってきた自分を裏切ることが許せませんでした。でも「生きるために仕事をしているのであって、仕事のために生きているわけじゃないのになんで自分は会社にすがろうとしているの?」と自問したり、「人生が2度あるならやろうと思っていたことをこの人生でやろう」と思い始めました。高校時代に学園祭実行委員会をやっていて、友達がいろいろやると喜んでくれてすごくうれしかった。「てるはエンターテイナーだよね」と言われた喜びが原体験にあります。

ピン芸人になろうと2009年にワタナベエンターテインメントの養成所に入ったのですが、入ってからが大変で、最初の5~6年は暗闇を歩いているようでした。後悔はしてなかったですが、ようやく楽しくなってきたのは昨年くらいですね。テレビに出るチャンスもありましたが、自分を表現できてないと感じてもどかしかったです。でも13年頭にに韓国のアイドルグループ、少女時代のパロディの「短足時代」というネタができ、事務所のライブで初めて優勝したんです。知的なことをしたいんじゃなくて馬鹿馬鹿しいことを形にして「自分もできる」と思いました。でもその後6年半付き合っていた彼氏と別れるなどいいことがなかった。

芸人として大きく動いたのは昨年です。尊敬する、くりぃむしちゅーの有田哲平さんの番組に出演できたり、米大統領選でネタの1つであるヒラリー・クリントンのモノマネをニューヨークでやれたりしました。ヒラリーさん負けちゃいましたけど、現地での芸がヤフーニュースで紹介され、周囲から「よくやった!」と言われました。思いつきで大統領選中のアメリカに行っちゃったんですけど「何でも自分でやってみるもんだ。やった結果は裏切らないもんだ」と思いました。

大手コンサルとお笑いの世界は同じ

石井てる美氏

最近ありがたいことにリポーターやミニドラマの仕事もいただくようになり、この世界での活動を楽しめるようになってきました。これも8年前の決断があったからこそ、です。最近、仕事について悩んでいる方から相談を受けるんですが、やりたいことを置き去りにして悩んでいる方って実はいるのかなって思うんです。お笑い芸人としてまだ成功してないんですが、辞めないでいるのは、好きな仕事というだけではなく、「まだ自分の力を120%出し切っていない」と思っていることと、お笑いの世界がものすごく平等な世界だということがあるからです。ラッキーパンチで1回テレビに出たとしても売れない。

シンプルに面白いネタを作る→ライブで受ける→テレビのオーディションで受かる→ブレイクする

本当にシンプルにそれだけなんだなと思ってます。

マッキンゼーもお笑いの世界も実力主義という意味では同じなんですよね。  最後にマッキンゼーにいて得られた最大の学びは「みんな失敗している」ということなんです。でもマッキンゼーの人たちは失敗と捉えず、成功に近づいていると思ってやっている。最後は自分を信じることじゃないのかなと。

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略歴

石井てる美

2006年東大工学部社会基盤学科国際プロジェクトコース卒業。08年同大学院修了後、外資系コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2009年夏に退職後、お笑い芸人を志し、芸人養成所「ワタナベコメディスクール」に入学。現在、ワタナベエンターテインメント所属のお笑い芸人として活動中。
著書「私がマッキンゼーを辞めた理由」(角川書店)